WKF空手組手競技ルール(オリンピックルール)

※この投稿ではWKF組手について書いています。形についてはこちら(https://skarate-lab.pro/wkf-kata-olympic-rule/)

※この投稿の内容は常に最新版であることを保証するものではありません。また、大会によってルールが違う可能性があります。

前回(https://skarate-lab.pro/karate_variety_rule/)、空手にはたくさんの流派や団体があってルールも色んなものがあるということを有名RIZIN選手を例に挙げて紹介しました。

今回はその中でもノンコンタクト系空手の世界的統括団体である世界空手連盟(せかいからてれんめい、World Karate Federation, WKF)で採用されているWKFルールを紹介したいと思います。

2021年オリンピックで採用されているルールはこのWKFルールです。

オリンピック以外でも、国内外を問わずノンコンタクト系空手の大会の多くはこのルールを基に行われています。

ちなみに、SKRT LABでもこのルールを軸にして練習しています。

WKFとは

WKFはノンコンタクト空手競技の国際競技団体です。

公式HPは右です。 https://www.wkf.net/olympic

世界空手道選手権大会、ワールドゲームス、プレミアリーグなどの大会を主催しています。

オリンピック出場選手はそれらの大会の成績によって作られたオリンピックランキングの上位者から選ばれました。

WKFルール

まずはルールブックを確認しましょう。

https://www.wkf.net/structure-statutes-rules にある Kata and Kumite Competition Rules for 2020 というのが組手競技と形競技のルールブックですね。

pdfでは https://www.wkf.net/pdf/WKF_Competition%20Rules_2020_EN.pdf です。

91ページあります。

長すぎて読んでられませんね…。

競技には組手と形がありますのでそれぞれのルールのポイントを二回に分けて見ていきたいと思います。

今回は組手ルールについて見ていきます。

形ルールについてはこちらです。https://skarate-lab.pro/2021/08/01/wkf-kata-olympic-rule/

WKF組手ルール

組手ではお互いに技を出し合ってポイント数を競います。

勝利条件は順に

1)相手に8ポイント差をつける

2)試合終了時にポイント数で上回る

3)試合終了時にポイント数で同じになったが、最初のポイント(先取)を得ている

4)ポイントが同じで先取がどちらにもない場合、副審4人と主審1人による判定で多数票を得る

となります。

団体戦の場合は判定による決着はなく、「先取」なしの同ポイントは引き分けとなります。

また、「反則」「失格」「棄権」で決着する場合もあります(「反則」「失格」については後述します。「棄権」はそのままの意味です)。

判定の際の判定基準は

a) The attitude, fighting spirit, and strength demonstrated by the Competitors.
b) The superiority of tactics and techniques displayed.
c) Which of the Competitors has initiated the majority of the actions.

となります。

各技で得られるポイント

どの技を決めると何ポイントが得られるかということについてはWKFの動画があります。

なかなか分かりやすいです。

全日本空手道連盟(全空連)も分かりやすく解説しています。出演は荒賀龍太郎選手と西村拳選手の東京オリンピック内定コンビです。

まとめると以下となります。

3ポイント(一本)

  • 上段(頭、顔、首)への蹴り
  • 崩れている相手への効果的な(上段または中段への突き・打ち・蹴り)

2ポイント(技あり)

  • 中段(腹、胸、わき腹、背中)への蹴り

1ポイント(有効)

  • 上段(頭、顔、首)への突き・打ち
  • 中段(腹、胸、わき腹、背中)への突き・打ち

技の成立条件

上記の技はただ出して当たっただけではポイントにはなりません。

ポイントとして成立するかどうかは以下のような条件を総合的に見て判断されます。

  1. Good form
  2. Sporting attitude
  3. Vigorous application
  4. Awareness (ZANSHIN、残心)
  5. Good timing
  6. Correct distance

周囲にいる四人の副審のうち、二人以上がポイントとして成立していると判断して旗を提示すればポイントが認められます。

両者に旗二本ずつの場合は、両者にポイントが認められます。相打ちですね。

これら6つの項目を一つずつ判断していくほど空手の試合はのんびりしていません。

審判はこれらを瞬時に総合的に判断する必要に迫られます。必然的に、WKF組手競技ルールでは審判に求められる能力が高くなります。大変ですね…。

WKFルール未経験者にとっては、ポイントが成立しているかどうか判断することはほぼほぼ不可能です。

オリンピックではVTRと解説が入るはずですのでそれに期待しましょう!

反則と罰則

反則行為(ペナルティ)は二つのカテゴリーに分かれます。

カテゴリー1(C1)

  1. 有効部位への攻撃だが、過度に接触しているものや喉に当たっているもの
  2. 手足、関節、股間、足の甲への攻撃
  3. 手を開いた技(掌底、貫手等)による攻撃
  4. 危険な投げ(回転軸が腰よりも上のものや捨て身技。背負い投げや巴投げ等)

カテゴリー2(C2)

  1. 負傷の誇張
  2. 場外
  3. 無防備
  4. 相手の得点機会を避けるために逃げ回る行為
  5. 不活動(残り時間が15秒以下では反則にならない)
  6. 有効打や崩しを意図しないクリンチ、レスリング、プッシュ、胸の押し合い
  7. 蹴り足をキャッチしての崩し以外での両手での掴み
  8. 即座に有効打を試みない片手での掴み
  9. 安全性をコントロールすることができない危険な技(胴回し回転蹴り等)
  10. 頭、膝、肘による攻撃
  11. 相手選手に話しかける、または煽る行為。審判に従わない。礼儀に反する行為。

ペナルティの累積

反則行為の数はC1とC2のそれぞれのカテゴリーでカウントされていきます。

1回目は「忠告」、2回目は「警告」、3回目は「反則注意」、4回目は「反則」が主審より与えられます。

「反則」が与えられるとその試合は反則負けとなります。団体戦の場合、スコアは0-8と扱われます。

「忠告」「警告」「反則注意」への罰則は後述する先取の取り消し以外には特にありません。(以前は相手にポイントが与えられるという罰則がありましたが、今はないです。)

これらの宣言は必ずしも一つずつ段階を踏んで進んでいくというわけではありません。反則行為の度合いによっては一回目でもいきなり「警告」、「反則注意」、さらには「反則」が与えられます。

「忠告」をイエローカード一枚として、イエローカード四枚分でレッドカード(反則負け)になるということです。

失格

以下に該当するようなとても悪質な反則行為には「反則」ではなく「失格」が与えられます。

  • 指示に従わないこと
  • 悪意をもった行い
  • 空手の名誉や威信を傷つけること
  • その他大会のルールや精神に反すると考えられる行動

「失格」の場合はその試合に負けとなることはもちろんのこと、大会への参加資格がなくなります。

空手の大会では、一人の選手が複数のカテゴリーに出場することはよくあるのですが、「失格」を受けると、それ以降の(反則行為を全く犯していない)カテゴリーの試合も反則負けとなります。

例えば、個人組手、個人形、団体組手にエントリーしている選手が、最初に行われた個人組手で「失格」を与えられた場合、後に行われる個人形と団体組手には参加することができません。どちらも反則負け扱いとなります。団体組手では0-8のスコアが与えられます。

「反則」はその場限りのことですが、「失格」は色々と後が引く罰則です。

その後の対人関係にも響きかねないため、何としても避けたいですね!

補足及び注意点

当てすぎについて

カテゴリー1の1の反則はよく知られたものです。「寸止め」と呼ばれる所以ですね。

「過度な接触」、いわゆる当てすぎの判断基準は大人(シニア)と子ども(カデット及びジュニア)で違います。

大人の方が当てすぎの判断には余裕があります。

安全のために子どもには判断が厳しくなります。

大人

コントロールされたものなら軽く顔、頭、首に「タッチ」してもいいです。当てすぎかどうかは審判が判断します。審判が強く当てすぎていると判断すれば反則です。

子ども

顔、頭、首への接触はどれだけ軽いものでも反則となります。上段蹴りのみスキンタッチが認められます。

投げ技について

よくある誤解で空手には投げ技がないと思われるのですが、試合中は投げがよく見られます。

ただし、カテゴリー2の9の反則があるために使える技は限られています。

足払いが一番よく使われる技です。

※12歳以下の試合(小学生以下の大会)では、足払いや崩しは全面的に禁止です。

下段への蹴り

WKFルールでの攻撃有効部位は上段(頭、顔、首)と中段(腹、胸、わき腹、背中)だけで下段はありません。そのため、下段(足)への蹴りは反則です。

ここがフルコンタクトルールの空手と大きく違うところですね。

試合ではローキックやカーフキック気味の技が見られることもよくありますが、反則になっていない場合は審判が足払いだと判断したということになります。

先取

「先取」は最初にポイントを得た選手に与えられます(両者同時ポイントの場合は次の得点)。

試合終了時にポイント数が同じ場合は「先取」がある方が勝利するため、「先取」があるかないかは僅差の試合で勝敗を左右する大変重要なものです。

勝ち逃げを阻止するために、「先取」を獲得した選手が

  • 試合終了15秒未満に場外に出る
  • 逃げ回る
  • 組み合い、掴み、レスリング、胸の押し合い

といった行為をした場合、闘いを避けたことによるカテゴリー2の「警告」が科せられた上に「先取」を失います。

まとめ

WKF組手ルールは言葉だけで説明しても分からないところが多々あります。

また、ここで記した以外にも試合場の広さや判定へのリクエストに関するものだったりといったルールがたくさんあります。

ただ、

  1. 何がポイントになるのか
  2. 当てすぎ、下段蹴り、一部の投げ技が違反行為だということ
  3. 先取とは

の3つを把握してもらえれば試合に出ても困ることはあまりないでしょう(ないとは言いません)。

あとは審判の指示に従って行動しながら慣れていけば問題ないはずです。

どんどん大会に参戦しましょう!

オリンピックもどうなるかは分かりませんが、上記の3つが分かっていれば通ぶれること間違いなしです。

空手観戦を楽しみましょう!

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